不安定な状況下における情報の選び方 分析的思考の6つの要素

2021年になって初めての投稿になります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

本日、緊急事態宣言が発令されましたが、今後も先行き不透明な状態が続いており、このブログの読者の皆さんのなかでも不安な気持ちを抱えている方もいらっしゃるのではないかと存じます。

新型コロナウイルスの新規感染者数および重症者数の増加といったセンセーショナルなニュースを日々メディアから受け取るなかで、私たちはどのような情報を取捨選択し参考にすれば良いのか、とても悩ましい状況下に置かれているような気がしてなりません。

特に、インターネットやSNSを通じて「新型コロナウイルスには〇〇の成分が有効である」といった怪しげな医療記事や、「緊急事態宣言発令によってトイレットペーパーがなくなる」といった根拠に乏しい言説を目にする機会が増えています。

このような状況下において、私たちはどのように正しい情報を見極めればよいでしょうか。

今回は、情報を正しく見極めるためのツールのひとつとして「分析的思考」をご紹介したいと思います。

参考文献は『まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために』です。

分析的思考の構成要素

分析的思考の基本スタンスは「その主張が信頼できるものなのかを検証する」ことです。

分析的思考を通じて検証をした結果、最も信頼できる情報のみを取り入れれば良いということになります。
現実には完璧に検証することはなかなか困難なため、「最も信頼できる」という書き方にしております。

分析的思考のメソッドは下記の6つの要素で構成されます。

  • 論拠
  • レトリック
  • 人的要因
  • 情報源
  • 定量化
  • 科学

それぞれ詳しく解説していきます。

論拠

論拠とは、「主張の前提がそもそも間違っていないか」「論旨のどこかに歪みがないか」といった視点で検証を行うことです。

結論までの論拠をたどっていく過程で矛盾や不条理と思える点が見つかった場合には注意が必要だ。前提そのものも重要で、それらが合理的で根拠に足るものであるか、検証に耐えられないほど脆弱でないか、確かめなければならない。

ここで参考になるもののひとつとして、「事例証拠の誤用」をご紹介しておきます。

「事例証拠の誤用」とは、「宝くじの高額当選、不治の病からの奇跡的な生還」といった稀な出来事をあたかも一般的な傾向として論拠にすることです。

巷のダイエット商品の広告にある「お客さまの声」などは、ほとんど「事例証拠の誤用」であるとみて良いでしょう。もし「新型コロナウイルスには〇〇が効く」といった主張の論拠として「私にはこれが効きました」などの声が挙げられていたら、まず疑ってかかって問題ないでしょう。

レトリック

レトリックとは、どのような形で論証が行われていたかを検証することです。ときどき「あの偉い先生が言っていたのでこの薬は効くに違いない」という主張がありますが、権威はエビデンスにはなりません

また、無理やり賛成・反対軸をつくりだして「私の意見に賛成しないのであれば、あなたは反対意見であり私の敵だ」というような主張をする人間もときどきいますが、これも基本的に相手にしなくて良いです。

権威が引用されていても、それだけでは不十分で、主張を支持するエビデンスも提示されなければならない。複雑な状況をたった一つの原因で説明しようとする、あるいはさまざまな見方がある問題を無理やり二つの立場に落とし込もうとする論証には注意すること。他人の見解を偽って提示しようとする論証は即座に却下すべきだ。主張を証明する責任は例外なく主張する者にあり、相手を中傷したりけなしたりするだけのやり方では何も証明できない。

人的要因

人的要因とは、なんらかのバイアスが論証に含まれていないかどうかを検証することです。バイアスのなかでも「確証バイアス」といって、人間には自分に都合が良い情報だけを選び取る一方で、逆に都合の悪い情報は見なくなる傾向があります。

よって、主張している人がどの立場の人間であるか、また、その人にとって都合が良い情報だけが選び取られている状態(著書ではこの現象を「チェリーピッキング」と呼んでいます)ではないかについて注意を払うことが重要です。

情報源

情報源が信頼に値するかどうかも検証する必要があります。

これはどちらかというと、情報を取得しているみなさん自身が、確証バイアスに囚われていないかどうかを検証する作業に近いかもしれません。

情報が公正なものか、それとも自分が聞きたいと願う何かを反映しているだけか、確かめる手間を省いてはならない。

定量化

その主張が定量化できるかについても重要です。また、数字が示されている場合においても注意が必要です。数字の読み方を間違えるとまったく異なる結論が導き出される可能性があるからです。

わかりやすい例として、相対リスクと絶対リスクの違いについて解説します。

ここでは、喫煙が与える健康へのリスクについて考えてみることにします。
※ここで用いる数字は例を説明するための架空のもので、実際の研究データによるものではございません。

与えられたデータは次のとおりです

  • 喫煙者の肺癌発症者数(A):1,000人中60人(6%)
  • 禁煙者の肺癌発症者数(B):1,000人中40人(4%)

上記の各グループを、相対リスクと絶対リスクで比較すると次のように説明できます。

  • 相対リスク:A / B – 1 = 6% / 4% – 1 = 50%
  • 絶対リスク:A – B = 6% – 4% = 2%

つまり、相対リスクで説明すると喫煙者の健康リスクは禁煙者の50%高く、絶対リスクで説明すると喫煙者の健康リスクは禁煙者の2%高い、という結論になります。

このように数字の使い方によって印象操作ができてしまうケースもあるため、数字の読み取りには注意が必要です。

科学

そもそも科学的に検証ができるかどうかも確認しておきましょう。よくあるのが占星術といったスピリチュアル関連の主張ですが、これは人によっていかようにも解釈ができるため検証することができません。よって、この段階で主張を却下できます。

 

以上、分析的思考の6つの要素について解説してきました。

インターネットでいつでも情報を取得できるようになった現代社会において、みなさんが目にする主張や言説をすべて分析的思考によって吟味するのは困難だと思いますが、たとえば、上記の6つの要素のうちのどれかをピックアップして検証するだけでも効果はあるのではないかと思います。

よろしければ参考にしてみていただけると幸いです。

 

[参考文献]
デヴィッド・ロバート・グライムス 著, 長谷川圭 訳『まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために』

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