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変革を実現できない理由とその対応策

今回は「変革」というテーマでお話ししたいと思います。

以前に、従業員からの信頼を高めるための8つの方法をご紹介させていただきました。

私の記事をお読みいただき、早速実行に移していただいている企業の方もいらっしゃるかと思います。

ですが、実行しようとするとなかなか人が動いてくれないなど、思うように進まないということもあるかもしれません。

なかでも権限移譲については、移譲元のリーダーの側に問題があることで、うまく部下に権限移譲ができないことが多いようです。一般的に考えられるケースとしては、下記のようなものが考えられます。

  • リーダー自身が自分の方が仕事を早くこなせると思っているため移譲が進まない
  • 大量の仕事を抱え込みすぎていて、移譲するための時間を確保できない
  • 部下に対して力を貸して欲しいと頼めない

これは権限移譲が進まない状況に関する一例ですが、このように、組織に変革をもたらそうとする場合には個人または組織レベルで、現状にとどまる力が頻繁に働きます。

今回は、変わりたいと望んでいるのになぜ変わることができないのか、その理由をご説明するとともに、どうすれば人や組織に変革をもたらすことができるのか、その考え方について簡単に解説していきたいと思います。

今回の参考文献は『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』です。

変革を実現できない理由

変わりたいと望んでいるのに変われないトピックとして、身近な事例として禁煙を挙げてみましょう。

例えば、皆さんがたばこを吸っていて、一緒に住んでいる家族やパートナー、また自分自身の健康上の理由などから禁煙したいと思っていると仮定します。

私の学生時代の友人で、当時1日あたり10本以上は吸っていたでしょうか。ある日、その友人は「俺は彼女のために今日から禁煙する。絶対にたばこは吸わない」と明言したのです。その1週間後、彼は喫煙所でたばこをぷかぷかふかしていました。「なんとか頑張って1週間は禁煙できたぜ!」と誇らしげな表情をしていました。それだけ禁煙は難しい目標のようです。

著書では禁煙に失敗する理由として次のように述べます。

変革がうまくいかないのは、本人がそれを本気で目指していないからではない。心臓を病んでいる人間が禁煙の目標を貫けないとしても、その人は「生きたい」と本気で思っていないわけではないだろう。変革を実現できないのは、二つの相反する目標の両方を本気で達成したいからなのだ。人間は、矛盾が服を着て歩いているようなもの。そこに、問題の本当の原因がある。

つまり、なんとしてでも禁煙したいという目標と、なんとしてでもたばこを吸いたいという目標(著書では「裏の目標」と呼びます)がコンフリクトしているのが理由です。

それでは、この「裏の目標」があるということをご理解いただいた上で、どうすれば真の目標を達成できるかについて、冒頭の権限移譲の話題に戻ってご説明していきます。

阻害行動を洗い出す

では、部下に権限移譲を行うことを目標として設定してみましょう(前提として、この目標をなんとしてでも達成したいと移譲元のリーダー本人が心の底から思っていることが必要となります)。

まずは、この目標達成を阻害する具体的な事象を洗い出します。

下記は、実際に権限移譲を行った際における阻害行動の事例です(以下、著書より引用)。

  • すぐに新しいことに手を出して、仕事を増やす。
  • 大量の仕事を抱え込みすぎて、睡眠、家庭、趣味など、仕事以外のことを犠牲にする。
  • 課題の緊急性と重要性に応じた時間配分ができない。
  • 力を貸して欲しいと頼めない

皆さんは権限移譲を行うリーダーの立場となって、ご自身の阻害行動を洗い出してみてください。

裏の目標を突き止める

阻害行動の洗い出しが終わった後は、その阻害行動によって達成される裏の目標を突き止めます。

著書の事例は下記のとおりです(以下、引用)

  • 他人に依存せず、万能でありたい(チャンスを逃したくない。遅れを取りたくない)。
  • 自己犠牲の精神の持ち主でありたい(チームのメンバーを見殺しにしたくない。自分を優先させれば、自分が利己的な人間に思えて、罪悪感がわいてくる)。
  • つねに問題の解決策を見いだしたい(未処理の課題を積み残したくない。なにかを断念するくらいなら、無理してでもやり遂げたほうがすっきりする)。

以上は著書で紹介されていた個別の事例ですが、なかには、多くの方に共通しているものもあるのではないでしょうか。特に「他人に依存せず、万能でありたい」という目標は程度の差こそあれ、私にもあてはまりますし、もしかしたら皆さんにもあてはまる内容なのかもしれません。

ちなみに、これらのワークは誰かに見せることを前提としていないため、皆さんが作業される際には「こんなこと書いたらまずいよな」という制限は一旦取り払って、思うままに書き出していただければと思います。

強力な固定観念をあぶり出す

裏の目標の書き出しが終わった後は、その裏の目標に対応する強力な固定観念をあぶり出します。「強力な」というところがポイントです。著書の言葉を引用すると次のとおりです。

 私たちが「強力な固定観念」という言葉を強調するのは、人間の自己認識と世界認識(そして自己と世界の関係についての認識)があくまでもその人の意識の産物だという現実を、読者やプログラム参加者に思い出させたいからだ。人はしばしばこの点を忘れて、自分の自己認識と世界認識を確固たる事実、異論を差し挟む余地のない真実、自己と世界の絶対的な現実だと思い込んでしまう

著書における強力な固定観念の事例は下記のとおりです(以下、引用)。

  • ほかの人を頼ったり、多くのことを上手に実行できなかったりすれば、自尊心を失う。
  • 自分を最優先にして行動すれば、薄っぺらで取るに足らない人——自分が大嫌いなタイプの人間に——なってしまう。
  • 課題をやり遂げる方法を見いだせなければ、価値ある人材でなくなる。

強力な固定観念が事実なのかを検証していく

最後に、あぶり出した強力な固定観念が本当に事実なのかを検証していきます。上記の事例でいうと、「部下を頼った場合に自尊心はどのように変化するか」といったように、あえて自分が恐れる状況に身を置いてみることで自分の内面を観察します。

最初は、信頼できる人に仕事を頼んでみるなどリスクの少ない方法で試していただき、「意外と大丈夫かも」という感覚を日々記録として積み上げていきます。

これにより、固定観念を徐々に覆していき、裏の目標を達成する動機を減らしていきます。

以上が、変革の目標を達成するための一連のプロセスです。

今回は著書の内容の一部を駆け足ながらご紹介させていただきましたが、実際の変革のプロセスは上記よりもさらに複雑で、かつ反復継続が必要な泥臭い作業となります。

具体的な変革に必要なツールや進め方など、もっと詳細な知識が知りたいという方は是非著書をお読みいただくとよろしいのではないかと存じます。

[参考文献]
ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー 著,池村千秋 訳『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』

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